“「共に学び、共に生きる教育」日本一の大阪へ!ネツトワーク”からの

「公開質問状」に対する、大阪府議会議員団・会派からの回答

 

201548

“「共に学び、共に生きる教育」日本一の大阪へ!ネットワーク”

代表 鈴木 留美子

 

私たち「共に学び、共に生きる教育」日本一の大阪へ!ネツトワークは、どんなに重い障害があっても地域であたりまえに生きたいと願う、障害当事者および障害のある子どもとその保護者、支援者を中心にした大阪府下123団体の市民ネットワークです。2008年、当時の橋下徹知事が提唱した「教育日本一をめざした」事業が実施されることで、能力主義の教育が推し進められ、障害のある子もない子も地域の学校でいっしょに育ちあう「共に学び、共に生きる教育」が破壊されてしまうのではないかと大きな危惧を感じ結成されました。私たちは「共に学び、共に生きる教育」として結実してきた大阪の人権教育の実践と歴史に自信と誇りを持っています。

 障害者基本法改正(20118月)、障害者差別解消法成立(20136月)と、国内法の整備等を経て、わが国は20141月に国連障害者権利条約を批准しました。障害者をめぐる状況は大きく前進したはずなのですが、私たちにはどう見ても周りの人たちに権利条約が知れ渡り、社会に変化の兆しが生まれているとは考えにくい現状があるように思われてなりません。

 障害者差別解消法ができたから障害者差別が無くなるわけではもちろんありません。憲法があるからいつまでも平和でおられるのではないということは、今誰もが身を持って実感していることではないでしょうか。私たち自身が障害者権利条約をひろげ活用していかなければ、何も変わらないのだと改めて考えているところです。

 統一地方選挙が間近に迫る中で、ぜひ各政党・議員の皆さんが大阪の障害のある児童生徒の教育の現状と、障害者権利条約についてどのような考えを持っておられるのか伺い、権利条約の中身を今後の大阪の施策に活かしていただくために、「公開質問状」を出すことにしました。また、投票にあたっての参考にさせていただこうと考えました。

 46日を期限とさせていただき、それまでに届いた「回答」は、以下の通りでした。

 大阪維新の会都構想推進大阪府議会議員団、公明党大阪府議会議員団からは、電話により、回答期日が迫っており議員団会議を開いて質問事項について話し合い検討する時間的余裕がないため、今回は回答を差し控えたいとの旨の連絡がありました。

 無所属の会、大志の会、府民クラブ、キラリと光る富田林・南河内クラブ、交野クラブ、大阪摂津府民の会からは返事をいただくことができませんでした。

 「文書回答」をいただきました、(回答が届いた日付の順番に)日本共産党大阪府議会議員団、民主党・無所属ネット大阪府議会議員団、自由民主党大阪府議会議員団の回答を掲載します。

すでに選挙期間にはいっていることもあり、敢えて私どもの見解等は差し控えました。質問事項はいずれも今後の大阪の教育を考えていく上で大切なことだと考えておりますので、大阪維新の会及び公明党府議団からの回答をいただいたうえで、あらためて各党各会派との話し合いを求めていく所存でございます。

皆さまにおかれましても様々な手段でこの回答集が有効に利用されますよう、念願いたしております。

よろしくお願い申し上げます。

 

私たちからの質問と、共産党府議団、民主党・無所属ネット府議団・自民党府議団からの回答

 

質問1.特別支援教育は、「場の教育から、ニーズに応じた教育」、つまり場を分けた特殊教育から障害のある子どもたちの願いに応じた教育へと変わるといわれながら、結局は「場を分ける教育」が維持強化されており、これは障害者権利条約のインクルーシブ教育に違反するものだと、私たちは考えています。このことについてどのようにお考えでしょうか。

 

〈共産党〉1と2を合わせて回答)

 障害のある子どもが教育から排除されず、豊かな教育を保障することが大切です。特別支援学校・学級などに在籍する子どもの数は増え続けており、国の設置基準を設け、過大・過密の特別支援学校の劣悪な教育条件を整備することは急務です。

 府立支援学校の増設、障害種別の学級設置など特別支援学級の新増設、すべての小中学校での通級指導教室の設置などをすすめます。

 

〈民主党〉

 民主党は障害者基本法改正・障害者差別解消法成立そして国連障害者権利条約の批准につき、国会や地方議会で先頭をきって主張してまいりました。

 障害のある幼児児童生徒の自律や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものと文部科学省が特別支援教育を定義している通り、障害児・者を教育現場をわけて教育するというものではなく、それぞれのニーズに合わせた適切な教育を行なうのが本来あるべき特別支援教育の姿です。

 しかしながら、ご質問にあるとおり、特別支援教育は社会から隔離された「場」に障害児・者を押し込めるためにあるという考えや、特別支援教育はそもそもそういった「場」であるという考えを持つ方や組織がある事は否めません。そういった考えは障害者権利条約のインクルーシブ教育に反するものであり、また、条約そのものの理念を否定するものとも考えられます。

 私ども民主党および民主党大阪府議会議員団は、障害児・者を含めたすべての社会的弱者に対し、社会全体が包摂することによって、個人の尊厳・均等な機会・多様性の尊重などが実現しうるということを基本的な理念としていますので、その様な方々の社会進出を積極的に支援していくよう考えています。

 

〈自民党〉

 大阪府では、障がいの有無に関わらず児童生徒がすべての学校で、多様な学びの場を用意するべく取り組んでおり、全国に先駆けて、高等学校における知的障がいのある生徒の学習機会の充実を目的に、平成18年度に自立支援推進校・共生推進校が制度化され、平成27年度には9校が府立自立支援推進校に、8校が共生推進校にされます。

 我が党では、今後とも、支援学校、支援学級だけでなく、通常の学校における環境づくりなど、多様な学びの場の提供を高めることに努力したいと考えています。

 

 

質問2.大阪府の公立高校には、知的障がい生徒自立支援コース11校、共生推進教室8校が設置されています。これは全国に例を見ない大阪独自の、入学試験で点数をとれない知的障害を有する生徒が高校に入学できる制度であり、知的障害に対する合理的配慮の一歩でもあると思います。しかし圧倒的に少ない募集人数は、知的障害のある生徒たちの間に受験競争を生みだしたり、普通高校への入学をあきらめざるを得ない結果をもたらしています。また、入学後も他の生徒と分けて教育されるのではという不安の声も聞こえてきます。これでは障害者権利条約のインクルージョンの原則が守られていないと考えます。知的障がい生徒自立支援コースや共生推進教室の現状と今後の展望について、どのようにお考えでしょうか。

 

〈共産党〉

 1への回答と同じ。

 

〈民主党〉

 民主党は、「希望する全ての子どもが障害の有無などに関わらず、同じ場で共に学ぶことを追求する」と政策集においてインクルーシブ教育の実現を強く主張しています。

 自立支援コースや共生推進教室についてはこれからも拡充していかなければなりません。「場」に押し込めた教育では、障害児・者のニーズに合った教育、つまり文部科学省が定義する前述の特別支援教育を満たすものではないからです。また、自立支援コースや共生推進教室を設けることだけでは、障害児・者のインクルージョンの必要条件にはなっても十分条件にはなりえません。そこで行なわれる教育が物理的にも精神的にも場を隔てたものであってはならないからです。

 最も重要なことは、それぞれの障害児・者のニーズに出来得る限り適した教育・社会参画の機会を与えることです。

 

〈自民党〉

 府では、自立支援、共生推進の充実に努めていますが、我が党では、高等学校における「ともに学び、ともに育つ」教育の推進が重要であるとの認識のもと、自立支援推進校・共生推進校のこれまでの成果について十分な検証を行い、後期中等教育段階で、障がいのある生徒と障がいのない生徒がともに活動し、ともに成長するためのよりよい教育環境づくりを進めていきたいと考えています。

 

 

質問3.高校入学を希望するすべての生徒が入学できる制度を私たちは求めていますが、どのようにお考えでしょうか。

 

〈共産党〉

 教育の機会均等の実現へ、すべての希望する子どもに高校教育の機会を保障することが大切です。高校進学希望者の全員入学にむけて、必要な条件整備を行います。

 

〈民主党〉

 学歴社会である日本において、高校卒業という資格はとても重要で人生を左右する資格といっても過言ではありません。特に、希望したにもかかわらず、学力不足や様々な要因で高校に入学できなかった場合、その個人にとって社会から阻害された人生を歩むことにつながりかねません。特に少年少女期に得てしまったそういった心の傷は一生涯にわたり暗い影を落とします。

 このような不幸なことは、社会的包摂を重要視する私ども民主党の考えと反しております。そのようなことがないように、就学を希望するものであれば学力如何を問わず、定員割れの高校への振替入学措置などを検討すべきであると考えます。

 

 

〈自民党〉

 障がいのある生徒も含め、高校入学を希望するすべての生徒が入学できるよう募集定員を確保するとともに、障がいのある生徒の高等学校の受入れに関しては、高等学校入学者選抜において、障がいがあるという理由で、不合理な取扱いがなされることのないよう、中学校や高等学校を指導することを求めていきたいと考えています。

 

 

質問4.3年連続定員割れを起こした高校は廃止とするとされていますが、このことについてどのようにお考えでしょうか?

 

〈共産党〉

 府立学校条例にある“3年連続定員割れの高校は再編整備"条項は撤廃します。

 

〈民主党〉

 定員割れの高校がある一方、定員を大幅に上回る入学希望者がいる学校もあります。それぞれの学校の特色や地域を鑑みた結果、学校ごとに入学希望者が偏ってしまうことは当然です。また、超少子社会を迎える現代、非常に厳しい財政である自治体が今までの学校数を維持することは困難です。財政の健全化のため学校の統廃合などの合理化は必要となってきております。

 しかしながら、教育こそがその国の経済成長の重要な要素となるという観点からすれば、財政健全化のためだけに画一的に「3年連続定数割れなら廃校にする」などは、成長要因を阻害することにつながりかねません。

 また、上記の通り、就学希望者で学力不足や他の要因のために高校に通えなかった方の受け皿としてや、加えて、年齢にこだわらない生涯学習を提供する場として、定員割れの学校を活用すれば、廃校する必要のある高校は今よりも少なくなるでしょう。

 

〈自民党〉

 府立高校の再編整備に当たっては、一律的な対応ではなく、該当する高校の「学校の特色」、「地域の特性」、「志願状況」を総合的に勘案し、慎重に見極めた上で募集停止、学科改編等についての判断を行うよう求めています。

 

 

質問5.小学校・中学校・高校など、全ての公立の学校は災害時避難所となる可能性が非常に高く、全ての公立学校にエレベーターを設置するのがインクルーシブな社会に踏み出す第一歩であると、私たちは考えます。このことについて、どのようにお考えでしょうか。

 

〈共産党〉

 安心・安全の学校へ、公立学校のエレベーター設置などの条件整備をすすめます。

 

〈民主党〉

 誰もが教育を受けられるように、また、緊急時の避難所としての機能など、公立学校には非常に高い公共性が求められます。その公共性を維持するために、高齢者の方や障害児・者などが不自由なく学校に出入りできるよう、エレベーターを設置することはインクルーシブな社会につながることであると考えます。

 財政的に可能な自治体はエレベーターの設置を積極的に検討すべきです。

 

〈自民党〉

 府立学校におけるエレベーターの設置については、全校に設置することを目標として、これまで毎年4校ずつ設置されてきていますが、府立高校及び公立小中学校の施設整備は、基本的に設置者が行うものと考えます。

 我が党では、学校施設の整備が効果的かつ円滑に進むように、国に対してもその財源の確保と制度の充実を強く求めていきたいと考えています。

 

質問6.障害者施策の立案に当たって審議会等が設置されるとき、障害当事者委員の参画はどの程度の割合で必要とお考えでしょうか。

 

〈共産党〉

 障害者施策の立案にむけて、障害者の意見が反映されるようにします。

 

〈民主党〉

 障害者施策の立案にあたる審議会の障害当事者委員の参画割合については、障害者基本法・障害者差別解消法や国連障害者権利条約などの理念から、障害者の割合を定めること自体が差別につながりかねない一方、障害者自身の社会的障壁を崩していくためには、障害者たちが意見を発信しなければなりません。

 よって、障害者の割合を具体的に定めることよりも、より一層多くの障害者に参画できるようにすることこそが、それぞれの理念に適うものと考えます。

 

〈自民党〉

 審議会委員の選任は、設置目的に応じた、適切な人選が行われることが基本と考えています。

 

 

質問7.学校教育修了後の障害児・者の進路保障について、どのようにお考えでしょうか?

 

〈共産党〉

 障害児・者の進路を保障するための条件整備をすすめます。

 

〈民主党〉

 学校教育修了後、それぞれの希望する会社や組織に就職できない障害児・者がいることは残念ながら社会通念上必然となってしまいます。私ども民主党は、そういった方々が社会と隔絶されないように包摂をし、実現可能な就業援助をしなければならないと考えます。

 教育を希望するもの、労働を希望するもの、それぞれ等しく機会が与えられる熟成した社会にすすむべきです。

 

〈自民党〉

 障がいのある子どもの自立と社会参加の促進は、極めて重要なことであり、就労をはじめとした支援体制の強化充実が進められるよう、働きかけてきたいと考えています。

 

※この「回答まとめ」に関するご質問、ご意見等は、下記宛に連絡してください。

松森 俊尚(マツモリ トシヒサ)

PCメール:matumori@crux.ocn.ne.jp

TellFax06-6933-3157