JICAインクルーシブ教育研修会で報告 2014年9月18日

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18日、JICAインクルーシブ教育研修会で、「知的障害者を普通高校へ北河内連絡会」代表の新(あらた)みすずさんと娘のマチコさんが講演しました。

この研修会の話をいただいたのは6月に遡ります。これまでJICAが途上国の教育省の行政官や、教員など教育関係者を呼んで、「インクルーシブ教育/特別支援教育研修」をされていたそうですが、大阪の障害者の高校入学の取り組みがあるとの話を聞かれたようで、今年は研修の一環として研修生の皆さんに大阪での取り組みを話してもらえないかと、「高校問題を考える大阪連絡会」に相談がありました。

うかがった時からワクワクするほどの興奮を覚えました。大阪の運動を世界に向けて発信できるかもしれないという途方もない空想が浮かびました。しかも教育、学校、障害者問題をこれから自分の国で切り拓き、つくりだして行こうと希望を抱いて来日されている皆さんと交流できることに、大きな魅力を感じました。それぞれの国の学校教育、障害児教育の現状を学びたいと思いました。

北河内連絡会代表の新さんと娘のマチコさんが話し、マチコさんが通った大手前高校定時制の先生から学校の受け入れ方や職員の意識変化、授業の工夫やようすなどを話してもらい、最後に片岡さんから大阪の高校入学運動の概要を説明してもらうことにしました。

発表当日、アフガニスタン、イラン、モルドバ、ナウル、パキスタン、ベトナム、ザンビアの7か国の計14名の研修生とスタッフ、参観者が集う中で研修会が開かれました。研修生の皆さんは終始笑顔を湛えながら聞き入り、また質問を重ねてくださいます。こちらが話し、英語に逐語訳しながら進める、正に国際会議がすすんで行きます。

発表のために新さんが提案の文書をつくりました。マチコさんの生い立ち、なぜ地域の普通の小中学校、さらに普通高校にこだわったのか、高校受験で「定員内不合格」になったこと。(受験者数が高校の募集定員を下回っているのに不合格とされました)それから毎年高校受験を続け、10年目に定時制高校に25歳で合格したこと。高校生活の問題点とすばらしさ、そして改めて友だちと共に過ごすことの大切さを切々と書かれました。また、大手前高校の湯前先生と片岡さんもレジメを書いてくださいました。それらをJICAで英訳して研修生の皆さんに渡して、前もって読んだ上で研修の場に臨んでいただきました。

発表前日の夜、お母さんからメールを2通いただきました、
こんばんは、明日よろしくお願いします。ホローの方、よろしく お願いします。
 娘には、会議と伝えています。娘は電車と言ったり、明日のいく用意とか服とか言っています。ノー天気です
追伸
娘は、明日持っていくバッグをベッドにもっていってやすんでいます(*^_^*)
 万智子さんの研修会に臨む覚悟が見えるようです。そして当日、リクルートスーツに身を包み、前で腕を組んで会話に聞き入り、参加者をしっかり見つめながら、最後まで3時間の研修会に参加しました。きっと多くのことを学んだにちがいありません。

研修生の皆さんの受け止め方もさまざまであったように思いました。日本の「すすんだ」教育制度や施設・設備、教育技術・方法を学んで、自国に寄与したいと考える人もあれば、むしろ日本の「インクルーシブ教育」の実態に批判的な人もおられるように、私には見えました。

なにせ英語で通訳しながら進めざるを得ないことと、何と言っても時間が圧倒的に少ないこと(3時間の枠組みとはいえ、通訳しながらの話ですから実質的にはその半分になります)があって、どうしてもお互いに「もっと話したかった」という心残りが生まれたのはいたしかたないところかもしれません。

前日参観した豊中市の小学校の普通教室で学ぶ重度の障害児の印象が強かったようで、何人もの方が触れられていたので、私は「普通教室で学ぶ(重度の)障害児は学習していないと思いますか?」との質問をさせていただきました。

きっとそれまでに研修会の場でなされているのだと思いますが、それぞれの国の障害者の現状や教育、学校の実態を出しながら話ができると、おのずから一人ひとりの障害者観も教育観も理解しながら進められたのではないかと思いました。なかなか難しいでしょうけれども。

824日〜930日までの長期にわたる研修会だそうです。ほとんどが横浜を中心として大学や国立特別支援教育総合研究所、支援学校、盲・ろう学校などを訪問交流する日程であったようですが、その中で4日間ではありますが、大阪の小学校や高等学校の参観と教職員との研修、また親の会や高校受験に取り組む人たちとの交流は、「一味違った大阪の活動」を実感していただけたのではないかと期待もしているところです。

それにしても私たち北河内連絡会としても、研修会に向けた準備の取り組みも含めて、けっこうワクワクしながら過ごせた期間でした。貴重な機会を与えてくださったJICA関係者の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。

発表された新みすずさんの文章と、湯前さんがまとめられた大手前高校定時制の取り組み、片岡さんによる大阪の高校受験の概要をホームページに掲載しています。もちろん、「英語訳」も載せています。私には理解できませんが、これだけ細かなアルファベットが並ぶペーパーを見るだけで「すごい」という満足感が彷彿としてきます。よろしければ外国の方にも紹介していただければと思います。




休憩時間に大阪名物キンツバとみたらし団子をふるまう