すみえの高校受験
みんなといっしょに高校へ行きたい

大町 和枝
 生まれながら「知的障がい」というハンディをもつ娘も、あと2週間で中学校を卒業します。「ともに学び・ともに育つ」教育の中で、小・中学校と地域の学校で過ごしてきました。時には辛く、時には楽しく、泣いたり笑ったりして友達の中で多くの事を学び育ってきました。
 娘が、小学4年の時、養護学級の担任の先生から「障がいが有っても他の子どもと同じ4年生なんだから、すみちゃんを小学4年生として見て接してあげないと…」と言われました。私たちは、この子を「他の子どもと同じ小学4年生として見て接してきただろうか?」とふっと考えらされた事があります。「小学4年生のすみちゃんではなく、すくすく学級のすみちゃん」として見て接してきていたように思い接し方を考え直すキッカケとなりました。いろいろな個性をもっている集団の中でクラスの友達と過ごす事の大切さ、障がいのある子は勿論、障がいのない子どもにとっても大切である事に気づき、「障がい」を理由に地域社会から切り離そうとしていた自分の考えや思いが、いかに狭くて小さいものだったかを娘を通して学ぶ事ができました。
 地域の中学校へ進学して「中学生」という少し大人になるような複雑な気持ちもあり、娘も「中学生らしく」見えました。クラブ活動も自分から“バドミントンをやる”と決めて一生懸命に努力をして、真面目に取り組んできました。その真面目さには、親の私も感心するぐらいです。寒い冬も・暑い夏も・毎日クラブ、クラブ…で過ごしてきました。仲間に励まされながら試合にも出場したり、引退まで続けることができた事は大きな自信となっています。「なぎさ高校に入学して、バドミントン部に入り、試合で勝ちたい!」というのが、本人の夢です。(夢が叶いますように。。。)せっかく、地域の中学に入学したのだからみんなと楽しく色んな事を学べばいいかなぁと思い、養護学級に通級する時間数を減らしました。原学級にいてる時間が多いのと行事などの主催が生徒会になり、生徒が取り組むことが多くなりクラスでの仲間意識が強くなったり、みんなと一緒に取り組み一生懸命に練習をしてきた達成感・満足感、そして負けた時のくやしさ、くやしさをバネにまた頑張る気持ち、負けたくない!絶対に勝ちたいという気持ちが表に出せるようになりました。このような成長は、人間関係の苦手な障がい者同志の中では育ちません。教科書でも学べません。友達や同世代の子の中で学び得てきたものです。だれもが中学を卒業したら高校へと進学します。「知的障がい」があっても高校へ進学したいと願って、長い間の夢であった「知的障がい」のある生徒の普通高校での受け入れがいよいよ始まります。大変うれしい事ですが、大阪府下各学区に1校で2〜3名という狭き門です。「知的障がい」のある生徒にとっては、希望と夢の光なのです。その小さな小さな光に希望と夢を求めてたくさんの人が「行きたい」と願っています。倍率も6倍という厳しい状況の中、娘は『枚方なぎさ高等学校の知的障がい生徒自立支援コース』を受験しました。面接での姿は、どこから見ても中学3年生です。受験を通して成長をしている姿を見ると大変だったけど、人生の中でわずかしか経験のできない「受験」を経験できたことは、本当によかったと思います。(合格したら、今までの疲れもぶっ飛ぶ!!だろうけど…)
 調査研究期間のこの5年間で、知的障がいのある生徒にとって多くの生徒が集まり、多くの個性が存在し、絶えずその影響を受ける高等学校という場で日々学んでいる事が大きいと考えられ、また周りの生徒にとっても知的障がいのある生徒を一人の級友として、自然に接する事で障がい者理解を日常的に学び、この体験から次代の共生社会を担う資質を身につけていく事が期待されるという、とても良い結果が出ていると府政だよりで報告されていました。その良い結果を「知的障がい生徒自立支援コース」だけでなく、どの高校にも受け入れていただき、たくさんの方々にこのような制度や、障がいのある生徒の進路を知ってもらうことにより、今までに何人もの「知的障がい」のある生徒が行きたいと願っても行くことが出来なかった高校へ一人でも多くの生徒を受け入れてもらえるように、小さい小さいこの光をチャンスに置き換えて、これからも親として、支援者として出来る限りのことはしていきたいと思っておりますので、これからも皆様のお力添えをいただければ幸いです。