大阪府知事選挙立候補者への公開質問状と
              立候補者からの回答
〈公開質問状

2011年11月4日

大阪府知事選挙立候補予定者様

「共に学び、共に生きる教育」日本一の大阪に! ネットワーク

(構成団体)知的障害者を普通高校へ北河内連絡会

  「障害」のある子どもの教育を考える北摂連絡会

    障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議

  高校問題を考える大阪連絡会 等 123団体

                                           代表:鈴木 留美子

        
 私たちは今回の大阪府知事選挙を機に、「障害」のある子どもたちのことをわが子のように大切に考えてくれる人を新しい大阪府知事に選びたいと考えております。
 私たちの投票行動に資するためにも、以下の質問を立候補予定の皆様にいたします。大阪府民に対して、候補者自らの言葉で誠実にお答えいただきたく、お願い申し上げます。
 なお回答は文書にて11月10日までにいただけますよう、お願いいたします。
 回答宛先およびお問い合わせ先は下記のとおりです。
(※回答宛先・問い合わせ先省略)

〈各候補者からの回答
〉 
 ※回答があった候補者の順に掲載。誤字等、すべて原文の通り
■質問1.前知事が主導されている「教育基本条例案」に対するあなたの評価を教えてください。
【梅田章二氏】
 「教育基本条例案」は、教育への政治の介入であり、憲法を踏みにじるものです。また、子どもの「教育への権利」をゆがめ、「国際競争力づくり」と称し、子どもたちに過酷な競争を強いるものであり、反対します。
 私、梅田章二は、子どもたちの教育条件を整備することが知事と府政の役割であることなどを明記した「子どもの権利条例」を制定します。
 
【松井一郎氏】
 この条例案は私も取りまとめに関与したものであり、全面的に支持しています。

 

【倉田薫氏】
 上から目線の条例で縛りつけるのではなく、個性や能力が多様な子どもたちがそれぞれ伸びるように、保護者、地域、学校に応じた教育を行う参加型への教育改革を進めます。

 

 

■質問2.「障害者の権利に関する条約」に盛られた“Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)というスローガンについて、あなたのお考えを教えてください。
【梅田章二氏】
 「私たちを抜きに私たちのことを決めるな」というスローガンは、国連での障害者権利条約の審議の過程で、障害当事者から発せられたメッセージで、その後の権利条約の審議に重要な影響をあたえました。また国内では、障害者自立支援法に反対する幅広い障害者団体の団結の旗印となったところです。その結果、「障がい者制度改革推進会議」の構成員の多くが障害当事者や家族、障害者団体の代表等が占めることとなりました。
もとより、種々の障害者施策は、障害当事者を抜きに決めるべきではなく、十分な意見表明の機会を保障することは、@当事者のニーズに即した制度構築を可能とすること、A当該制度の利用を促進し制度目的の達成を容易にすること、B立法過程をより民主的に構成すること、などの点において、効率的・民主的な行政運営においても欠かせない視点と言えます。以上のことから、障害者施策にとどまらず幅広い分野で、「私たちを抜きに私たちのことを決めるな」の精神を行政運営に生かしていきたいと考えています。

 

【松井一郎氏】
 障がい者の権利に関する条約の策定の過程において、障がい者団体の統一スローガンとして使用されたものと理解しています。

 

【倉田薫氏】
 障害当事者から発せられた「私たちを抜きに、私たちのことを決めるな」というスローガンに感銘しました。障害者にかかわる国や大阪府の政策・制度作りや、その運用においても、基本になるべきものだと考えます。
 今回の障害者基本法改正にあたって、その中心となった「障がい者制度改革推進会議」の委員の過半数が、障害当事者やその家族、障害者団体の代表で構成されたことは、画期的なことであったと思います。それゆえに「共生社会の実現」「インクルーシヴ教育への転換」をめざす熱い論議が生まれたものと思います。
 障害者にかかわる問題だけではなく、大阪府の様々な課題において、「私たちを抜きに、私たちのことを決めるな」の精神を大切にしていきたいと考えています。

 

 

■質問3.あなたがお考えの教育に関する施策やプランには、「障害」のある子は含まれていますか?含まれている場合は、具体的にお答えください。
【梅田章二氏】
 通常学級には、特別な配慮を必要とする子どもたちや、発達障がいの子どもたちが、必要な手立てが講じられず、学級担任一人に教育保障の責任が負わされている実態があります。
 梅田章二は、発達障がいの子どもを含め、一人ひとりの子どもたちに手厚い教育を保障するために、小中学校の「30人学級」へふみだします。まず、国にさきがけて「35人学級」を小学校3年生、中学校1年生にひろげます。あわせて、特別支援学校は、児童生徒の在籍増に必要な教室の確保すらできない状況にあり、当面5地域で増設をすすめます。

 

【松井一郎氏】
 私が取りまとめに関与した教育基本条例においても、「自立支援が必要な児童生徒、学習障がい及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒が等しく教育を受けるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」旨定めているところであり、大阪府の教育を進めていくにあたって、障がいをもつ子どもの教育を受ける権利に配慮していくことは大切であると考えています。

 

【倉田薫氏】
 行き過ぎた能力主義や競争主義、評価主義の中で、子どもたちが苦しんだり喘いだりすることのないようにしなければと思います。特に東日本大震災を経て、支えあう、つながりあうことの大切さを改めて痛感しているところです。また、府民の皆さんもそれを求めているのではないでしょうか。
 教育も同じです。競い合うだけではなく、友だちといっしょに学び合う教育が求められていると思います。「いっしょに学び合う」ということは、障害のある子どもも共に学ぶということです。より豊かな教育が生まれると思います。

 

 

■質問4.「障害」のある子が支援学校ではなく地域の学校へ就学することについて、どのようにお考えでしょうか?そのように考えられる理由もお教えください。
【梅田章二氏】
 障害者の権利条約で重要なことは、障がいを理由に「排除されない」ことにあります。地域の学校もしくは特別支援学校のどちらで学んでも、適切な教育が保障されなければなりません。また、地域の学校と特別支援学校は、子どもの学びについてそれぞれに重要な役割を果たしています。どちらを選択するかは当事者と家族の判断が尊重されるべきです。しかし、当事者および家族に十分な情報がなければ適切な判断ができません。保護者の悩みや困難をうけとめ、適切な療育等を保障する機会も大切であり、当事者および保護者が就学先を適切に判断できるよう、体制の充実が求められます。
 知事と府政に求められることは、子どもの学習権を実質的に保障するために、それぞれの学びの場に必要な条件整備をおこなうことだと考えます。

 

【松井一郎氏】
 幼少期においては、地域の学校に通うことが原則と考え、「共生推進校」を今後も整備するべきと考えています。しかしながら、子どもの障がいの状況にも大きく依存します。地域の学校全てに、(例えば、特殊な配慮を必要とする難病といった)障がいをもつ子どもに万全のサポート体制を整備することが限られた教育予算では相当困難であることに鑑み、障がいをもつ全ての子どもを地域の学校で受け入れるのではなく、幼少期であっても支援学校が最適となる場合もありえると考えます。
 そして子どもが成長するにつれ、社会へ羽ばたくため「自立」の観点が重要になってきます。障害者の権利に関する条約の原則として、固有の尊厳、個人の自律及び個人の自立を尊重することが掲げられていますが、「自立」を実現するための優れたノウハウを支援学校は有しています。
 したがって、一律に地域の学校、支援学校と決めつけるのではなく、障がいをもつ子どもが自立していく上で最も適切と考えられる環境を選択できる体制を整備することが何より大切と考えます。
 教育基本条例案では、教育委員会から学校現場に権限をどんどん移譲させ、地域の各学校の取り組み、支援学校の独自の取り組みがわかるよう情報公開を徹底します。この条例案が成立すれば、障がいをもつ子どもが最も適切な学校はどの学校であるのか、先進的な取組を行う学校の情報をもとに、選択することが可能となります。

 

【倉田薫氏】
 大阪では、地域の学校で「ともに学び、ともに育つ」教育が、全国でも先進的な教育として取り組まれてきました。私が市長を務めていた池田市でも、障害のある子もない子もいっしょに地域の普通学校に通い、学んでいます。今回障害者基本法が改正されたことを受けて、さらに大阪でインクルーシヴ教育が充実するよう努めていかねばならないと考えます。

 

 

■質問5.「障害」のある子が府立高校への進学を希望した場合、どのような進路保障が適切だとお考えですか?そう考えられる理由もお聞かせください。
【梅田章二氏】
 学校教育にあたっては、子どもの成長・発達を保障することが一番重要です。肢体不自由児の府立高校への進学にあたっては、学校の施設・設備の改善や特別な人的配置が必要です。知的障がいや発達障がいの子どもの府立学校への進学の在り方については、学校・保護者・専門家の意見をよく聞きながら、子どもの成長・発達の保障の観点で、総合的に判断することが大切だと考えます。

 

【松井一郎氏】
 自立を望む子どもが「自立」を実現できるような教育を提供できる学校を整備することが、子どもたちの「進路」を保証することにつながると考えています。例えば、支援学校のたまがわ学園では、普通校を上回る就職率です。これは支援学校の支援体制が充実している証左であり、自立を望む子どもにとって支援学校がささえとなっていると理解しています。
 
【倉田薫氏】
 大阪府教委は、障害のある生徒もない生徒も「ともに学び、ともに育つ」制度として、府立高校に「知的障がい生徒自立支援コース」と「共生推進コース」を作りました。毎年の受験倍率が一般高校よりも非常に高くなっていることは、障害生徒や保護者の皆さんが中学卒業後の進路として、支援学校だけではなく、広い選択を希望されていることがわかります。特にみんなと一緒に普通高校への進学を希望する人たちが増えてきたことの表れでもあると思います。自立支援コースと共生推進コースの高校の数をもっと増やす必要もあるかと思います。
 また、高校に入学した障害生徒に対する人的配慮や、障害生徒も入った教育の在り方の教員研修なども進めていく必要があると思います。
 維新の会の「教育基本条例」にある「3年連続で定員割れをした高校は廃校にする」などといった、荒唐無稽なことが実施されれば、障害生徒や保護者の願い、選択肢を奪い取ることになってしまいます。